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落選×2 [近況1]

どーも、「月刊落選情報」のコーナーでーす!

とかいって。。。

それくらい応募した小説が落ちまくっている秋見です。(^_^;)

 

まずは、GBAことゴールデンブログアワード

TOP30にも入れず落選。。。

この作品は、「その後の話」を第二部として

<北>、里見、安久津との対決を書こうとしていました。

資料を読み、プロット(話の骨子)を作ったのですが

落選で書く気をなくし、意気消沈。

制作を中止しました。

コメントで面白いと言ってくださった方がいたので

それで満足って感じです。

 

もうひとつは、日本ホラー小説大賞

このブログで「応募しました」と報告した賞です。

本日、一次選考結果が出て、落選です。。。

こちらは、仕方ないかなと思ってます。

ストーリーが弱いので。。。

 

なかなか上手くいかないもので。。。

でもまあ、仕方ありません。

文学賞とは数百編の中から

数編が選ばれるという難関ですからね。

 

連敗もとうとう二〇を重ね

なんだか落選慣れしてきたかも、の今日この頃です。

それはそれでヤバイかもと思ったりしますが

自分に何が足りないのかを考えながら

新しい応募作の制作に励んでいるところです。


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共通テーマ:日記・雑感

落選作品2-4 [落選作品2]

 

 「みょんみょん大魔王の逆襲」 ~ 続き ~

 

 

「向こうへお行きなさい。あなたたちに用はなくってよ!」

 前をゆくクシャランヌカトリーヌが剣を振って、猿の群れを追い立てる。密林に入って半日近く。密林を歩くことが、これほど困難だとは思わなかった。

 陽射しが草木で隠れるぶん、涼しいかとおもいきや、じめじめとして蒸し暑く、気温は低いかもしれないが、密林の中にいるほうが明らかにささくれ立った気分になる。かといって、胸元や袖を開けて風を入れるわけにはいかない。いつ虫が飛び込むか分からないし、いつ木の汁が落ちてくるか分からない。草木や樹液の臭い、足元のぬるぬるした土、水溜り、虫や獣の鳴き声、すべてが人間の神経を逆なでするために存在しているのでは、と思いたくなる。

 バキーバが失踪してから、何日も経っている。バキーバは、ずっとこんな不快な場所で暮らしているのだろうか。何を食べているのだろうか。みょんみょん大魔王は、何の目的で調査員や兵士を奪ってゆくのだろう。やはり、復讐か。バキーバは、不当に扱われてはいないだろうか。不安が募る。すっかりやせ細って、虫と獣のなかで横たわる別人のようになったバキーバを想像して、テルキィは背筋が寒くなった。

 結局、全員が四頭身を達成してから三日間、進展はなかった。これ以上、続けてはいられないと判断し、また、全員一緒に唱えれば魔力が増大するから大丈夫というちょっとした自負も手伝って、こうしてみょんみょん大魔王との対決に乗り出したのであるが、密林を進むうち、だんだんと神経がすりへり、最初の気合を忘れそうになる。

 全員が玉砕しては後発の部隊育成が遅れるから、一人を残して五人で乗り込んだ。出だしは、玉砕覚悟で決死の思いで出発したのだが、密林を歩いてゆくうち、「明日でもいいかな」などという気持ちが心の隅に見え隠れする。

 先頭を、みょんみょん魔法部隊で唯一の兵士であるクシャランヌカトリーヌが務め、草木を剣で切り落とし、後続がとおりやすくしてくれているのだが、半日も歩いていると体のあちこちが汚れ、髪もいつのまにか樹脂や枝や葉っぱで汚れている。ところどころ色鮮やかな花が群生していて、これが旅行中なら楽しめる部分もあるが、終着地の分からない行軍をしている今のテルキィたちに、花を楽しむゆとりはない。せめて、いつどこにみょんみょん大魔王が現れるのかが分かれば、気持ちが楽になるのだが、今までの失踪事件発生地点に共通項がなかったため、テルキィたちは闇雲に進むしかなかった。

 日の高さを見て、そろそろ引き返す頃だと考え始めたときだった。

 みょんみょん大魔王が現れた。

 そこはちょっとした広い空間で、まるでこの対決のために用意された闘技場のようだった。背の低い草の上で、みょんみょん大魔王は待っていた。頭にセクシートリカブトの輪を置き、茶色の髪で、短い袖のシャツ、ひざまでのスカート。密林に入る格好だとは思えないその姿は、偵察兵の報告どおり。物憂げな視線を、現れた五人へ漠然と向けている。思ったより見た目は若い。

 みょんみょん大魔王が、両手を頬にゆっくり近づける。

 クシャランヌカトリーヌが剣を鞘にしまい、戦闘開始を告げる。

「みなさん、ゆきますわよ!」

 みょんみょん魔法部隊が横一列に並び、構える。一同が四頭身になるのと、みょんみょん大魔王が三頭身になるのが同時だった。

 確かに、三頭身は四頭身よりかわいい。その見事な変身は、さすが大魔王と認めざるを得ない。だが、こちらには数の力がある。

 クシャランヌカトリーヌが開戦を告げる。みょんみょん合戦が始まった。

「そーれっ!」

『みょんみょん』

「みょんみょん」

 一瞬、体の中が痺れるような不思議な感覚が起こる。これが大魔王の力か。テルキィは、必死に自我を意識して、他の四人に同調して魔法を唱え、拳を振る。

『みょんみょん』

「みょんみょん」

『みょんみょん』

「みょんみょん」

 体の痺れが強くなる。ダメかもしれない。テルキィは、バキーバの顔を思い出し、疑念を振り払って、魔法を唱える。みょんみょん大魔王にではなく、バキーバにむけて。

『みょんみょん』

「みょんみょん」

『みょんみょん』

「みょんみょん」

 みょんみょん魔法部隊の二人が、隊列を離れて、みょんみょん大魔王のほうへ、ゆらゆらと歩み寄る。その姿は三頭身だった。まさか、対決の間に極意を掴んだか。しかし、期待は二人が同時に言った言葉で打ち消された。

「か、かわいい」

 やられた。二人は、相手の術中にはまった。五人でかなわない相手に、残りの三人でかなうはずがない。テルキィは、二人に歩み寄り、名前を呼んで体を揺さぶった。二人のセクシートリカブトの輪を取ったが、姿が元に戻らない。振り切られた。二人は、みょんみょん大魔王の隣に並ぶ。

 テルキィはクシャランヌカトリーヌを見る。テルキィが何か言う前に、クシャランヌカトリーヌは結論を出した。

「ここは、いったん引くしかありませんわ!」

 三人はセクシートリカブトの輪をはずし、踵を返した。来た道へはいる。テルキィは二番目にはいった。しんがりのクシャランヌカトリーヌが立ち止まって、先行く二人を止めた。

「お待ちになって!」

 振り返ると、みょんみょん大魔王の姿がない。木々の向こうに、走る背中が見える。大魔王も、そのあとに続く二人のみょんみょん魔法部隊員も、既に大人の体型に戻っている。

「追いますわよ!」

 クシャランヌカトリーヌが走る。テルキィと、残りの隊員が後に続く。みょんみょん大魔王は、それほど足は速くない。ただ、道を知っているためか、なかなか追いつけない。見失いそうになりながら、三人は必死に後を追った。

 みょんみょん合戦にたどりつくまでの間は、クシャランヌカトリーヌが剣で木に傷をつけているから、それを目印に帰れるが、はぐれたら帰れなくなるかもしれない。そう思うと戦慄が走る。

 相手の姿が消えそうになる危うげな追走をつづけるうち、みょんみょん大魔王の身に汚れがない理由が分かった。この密林は、無節操に草木が生えているように見えるが、実際はきちんと道ができている。目立たないように曲がりくねっているが、樹液もないし虫もいないという空白地帯が、細長く続いている。足元は草が生い茂っているが、しっかりとした硬い土だから走りやすい。これもみょんみょん大魔王の魔法か。みょんみょん大魔王は、曲がりくねった道に沿って走っていたから、足が遅く見えていたと気がついた。

 みょんみょん大魔王の姿が見えなくなった。三人の足がとまる。

「こちらですわ!」

 クシャランヌカトリーヌが、自信を持って一方へ走りこむ。彼女も、空白地帯の道に気がついたようだ。三人は、敵の姿が見えないまま、しばらく走り続けた。

 息が上がり、足の運びが鈍くなった頃、大きな泉に出くわした。かなり大きな泉だ。泉の大きさや、ここまでの道のりを考えると、登録番号「南四西十五」だろう。

 遠くにみょんみょん大魔王の走る姿が見える。道に間違いはなかった。

 三人は、思わず足が止まった。みょんみょん大魔王を見たからではない。泉を見たからではない。クシャランヌカトリーヌが、驚きを込めてテルキィの気持ちを代弁した。

「なんですの。これは…」

 目の前に広がっているのは田園風景だった。森と泉の間に広がる平原に、畑がびっしりと並んでいる。田んぼもあって、傍を流れる小川から水車を使って水をひいている。遠くには小屋があって、小屋のまわりに張り巡らせた柵の内側では、牛が牧草を食べている。

 この地に村があるはずない。第九森林区域は、都市化計画の準備として、半年前に人数をかけて隅々まで調査した。そのときは、ここまで奥地に来ると、人間が住んでいた形跡もない自然そのままの場所だった。こんな奥地に住む酔狂な者などいないという判断で、この地は定期巡回に入れていない。半年で、ここまで作り上げたのだろうか。

 一番テルキィが驚いたのは、農作業員だった。平和そのもののこの風景で、働いている人のほとんどは、テルキィたちが探していた失踪人だった。

 農作業員たちには一人ずつ監視員らしき人物が傍に控えている。

 みょんみょん魔法で獲得した人材を、こうして農作業員として使役しているのだろうか。みょんみょん大魔王は、第九森林区域に自分の国を作ろうとしているのか。

 テルキィの右斜め前のほうに、黒髪で白い肌の兵士が見えた。バキーバだ。テルキィは走った。バキーバの近くまで行って気がついた。いつものバキーバではない。普段はどこか悩ましげで、いつも難しいことを考えているような、兵士らしからぬ思想家めいたところがあった。遠くを見て考えにふけるその横顔に惚れたものだが、いまは、いつも彼を薄く覆っていた「憂い」が全くない。

 彼の表情は明るく輝き、顔を伝う汗さえも輝いてみえる。楽しい遊びに打ち興じているかのようにクワを振り下ろし、元気いっぱいに畑を耕している。いまのバキーバには「さわやかな好青年」という言葉が良く似合う。テルキィの心の温度が、急変した。

「こんなの、バキーバじゃない…」

 そのつぶやきで、バキーバはテルキィに気がついた。

「やあ、テルキィ。久しぶりだね」

 片手を挙げて元気よく挨拶するバキーバなんてはじめて見た。テルキィに爽やかな笑顔を見せるなんて初めてだ。バキーバは、こんな表情もできるのだと知った。

「ねえ。これどういうこと?」

「はっはっは。驚くのも無理はないよ。俺も最初はびっくりした。ここはな、一言でいえば、老人介護施設だ」

「はあ?」

 おもいっきり頓狂な声をあげてしまった。バキーバは、そんなテルキィの表情を楽しむかのように笑い、話を続けた。

「みょんみょん大魔王はな、介護が必要な老人を集めて世話をしているんだよ。だが、まあ一人じゃ無理だよな。だかあ、みょんみょん魔法で人を集めて、集落で世話をするという形をとったわけだ。そして俺たちは、みょんみょん大魔王に選ばれた」

「そんな…」

 見渡してみると、監視員だと思った人は皆、老人だった。この老人たちが、要介護の人たちなのか。それに、活き活きと働いているのはバキーバだけではない。作業員みんなが何だか溌剌としていて、元気よく笑顔で作業に従事している。なかには老人と楽しげに会話をしている人もいる。バキーバのずっと向こう、柵の中では、バキーバと共に偵察に出たサマトヨが、さわやかな笑顔で汗を拭き、牛の乳搾りをしている。

 バキーバは、夢想にひたるかのように目を閉じた。

「世のため人のために活動してるんだよ。そして、あのかわいい姿。考えるだけで、くーっ、やる気百倍だぜ!」

 元気よく拳をふりあげると、威勢良くクワを振り下ろして耕す。バキーバのあまりの変貌にしばらく言葉が出なかった。バキーバをどうにかする気は、なぜか起きなかった。だから、やっと出た言葉は、みょんみょん大魔王に関するものだった。

「じゃあ、なんで大魔王なんて呼ばれているの?」

「ああ、それは、みょんみょんという偉法を使って、人々を幸せにする女様ってことだよ」

「んなアホな」

 あきれて言った言葉は、バキーバには聞こえなかったのか、笑顔で元気いっぱい畑を耕す。腕を止めると、畑の端で座っている老人と笑顔を向け合う。想像もしなかった光景に、次の言葉が出なかった。

 周囲の作業員から軽く歓声があがる。声の中心を見ると、みょんみょん大魔王がいた。あぜ道の交差点に立ち止まり、頬に拳をよせる。

「お腹すいた~ぁ、みょんみょん」

 みょんみょんの部分で、三頭身になる。周囲から歓声が沸く。バキーバが大声でまわりに言った。

「よーし。メシにしよう!」

「おーっ!」

 作業員たちが元気よく答える。作業を中断して、みょんみょん大魔王を中心に向こうの林に向かう。それぞれ、老人の手を引き、あるいは背負って、談笑しながら和気あいあいと、軽やかな足取りで去ってゆく。

 みょんみょん大魔王の洗礼を受けていない、テルキィたち、みょんみょん魔法部隊の三人が残された。テルキィは、クシャランヌカトリーヌを振り返った。彼女でさえ、この状況に対応できずに呆けいていた。

 

     *

 

 みょんみょん大魔王の施設名は「みょんみょん老人介護院」と決まった。

 国王がこの地に視察に来ていたため、話が早く進んだ。

 会議は、テルキィのほか、みょんみょん魔法部隊長であるクシャランヌカトリーヌ、ミミル大老とその側近、地方領主、南西部第四国民保護署長、南西部第十八連隊長、国王と彼の側近、そして、みょんみょん大魔王側からはバキーバが参加した。

 ミミル大老が、みょんみょん大魔王の能力を説明したとき、国王が「会いたい」と言い出して、ちょっとした騒動になったが、それを押しとどめたあとは、話は案外順調だった。

 第九森林区域の都市化計画が、まだ調査段階だったことが幸いした。「みょんみょん老人介護院」に差し出す人材を、老人ひとりにつき国民ひとりにし、人材の選定は南西部第四国民保護署が行なうという条件で、都市開発は、第二候補地である第十二森林区域に変更になった。

 みょんみょん大魔王を敵に回すのは得策ではない、というのが一番の理由であるが、国王の側近の話し振りからすると、都市化計画は、第十二森林区域を押す意見が強くなってきていて、今回の事件が都合よく働いているようだった。

 会議が終わって、意気揚々と「みょんみょん老人介護院」に帰ってゆくバキーバの背中を見ても、もうテルキィの心は何も動かなかった。

 今回の縁で、テルキィは、南西部第四国民保護署・森林保護部の二級官から、新設された老人介護部の部長に任命された。新設部署は、先が読めないところであるが、書類の上では昇格なので、テルキィは喜んで拝命した。

 配属してすぐに、みょんみょん老人介護院に送る介護士を募集した。署長が内密に言ってきた「社会貢献の無い人材を送るように」という指示を気にする必要はなかった。集まってきた人たちは、なぜか、働きもせず、職業訓練さえやらず、だからといって学術員や芸術家をめざすでもなく、家に閉じこもり社会との交流を絶って親に養ってもらっている人間ばかりだった。

 多くは年齢が若く、その点を考えると、「将来、役にたつ人材になるかも」と思えてためらいが出るが、テルキィが直接面接をしてみると、差し出してもいいかも、と結論したくなるような覇気のない人ばかりだった。

 あまり年齢が高い人を送るわけにもいかない。老人介護は、わりと体力が必要だし、それに、年齢の高い候補者はそれなりに社会経験があって、多少なりとも社会貢献をしている。結局、送るのは「若い覇気のない働かない人たち」ばかりになった。

 

     *

 

 老人介護士の引渡しは、ふるさとログハウス「オレンジモーモー」でとりおこなう。

「みょんみょん」

「みょんみょん」

「か、かわいい」

 今日もまた一人、老人介護士が誕生した。

 

 

                     やれやれ

 

 

                       了


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落選作品2-3 [落選作品2]

 

 「みょんみょん大魔王の逆襲」 ~ 続き ~

 

 

「みょんみょん」

「みょんみょん」

 少女たちの声が、森に染みとおる。森に入ってすぐのところにある、ふるさと振興財団が持つ、ふるさとログハウス「オレンジモーモー」を借り切って、はや五日。外界との交流を断ち切って、みょんみょん修行は続く。

 セクシートリカブトの葉は、案外簡単に集まった。利用価値のないこの草は密林に入ると大量に自生していた。だからこそ、みょんみょん大魔王は、この地を選んだのかもしれない。

「みょんみょん」

「みょんみょん」

 みょんみょん魔法部隊に召集したのは六名。部隊長にクシャランヌカトリーヌを任命した。テルキィも加わった。なんとしてもバキーバを取り戻す。その気持ちがあれば、みょんみょん魔法の習得は、たやすくできるはずだと思っていた。

 それにしても、みょんみょん魔法が、「かわいらしさ」を追求するものだとは思わなかった。バキーバは、魔法とはいえ「かわいらしさ」に負けた。そう思うたび、胸の奥が締めつけられる。これが嫉妬なのだと、今日になってやっと気がついた。

「みょんみょん」

「みょんみょん」

 四頭身半までは、みな容易にたどり着いた。だが、それからが困難を極めた。個別に修行するより、横一列に並ぶと、みょんみょん魔法が発動しやすいと分かり、昨日から庭に出て、横一列に並んで修行をしているが、それでも、四頭身にたどり着くのがテルキィを含め四名。あとの二人はまだ四頭身半のままだ。

「みょんみょん」

「みょんみょん」

 頬に拳をよせ、リズミカルに手首を動かし、拳を上下に振る。もう日が暮れる。三頭身にたどり着くのは、いつの日か。外界との唯一の交流点である一日一回の食料補給のときに、状況を聞いてみると、ミミル大老から、みょんみょん魔法は、男がかかりやすいという助言があり、委員会は調査員と偵察兵を女に変更した。それ以降、失踪者は出ていない。だが、それもいつまで持つか。調査員と偵察兵に女は少なく、このまま彼女たちだけで捜索を続けていては、いつか過労で倒れる者が出るだろう。

 みょんみょん大魔王が、女に狙いを変更する可能性もあるし、本部をかぎつけて、そこを襲撃する可能性もある。数日後には国王が、この地にやってくる。悠長に構えてはいられない。しまった。四頭身半に戻った。集中を高める。四頭身にする。

「みょんみょん」

「みょんみょん」

 テルキィは、ひざを地面につき、手をついた。頭からセクシートリカブトの輪が落ちて、姿が元に戻る。

「だめだわ。どうしても四頭身までしかいかない。このままでは、みんなみょんみょん大魔王の手下にされてしまう。いったい、どうしたらいいの…」

 みょんみょん魔法部隊の面々が次々とテルキィに励ましの言葉をかけてくる。

「あきらめては駄目。簡単にできるなら、そこらじゅうにみょんみょん大魔王がいることになるわ」

「そうよ、これを成し遂げるには、死に物狂いの特訓が必要なのよ」

「がんばりましょう、テルキィさん。これを乗り切ったら第九森林区域の平和がとりもどせるのですよ」

「私たちなら、きっと究極のかわいらしさを勝ち取れるはずです。そう、信じましょう」

 確かにそうだ。みなの言葉は正しい。テルキィがするべきことは、セクシートリカブトの輪をかぶり、みょんみょん修行を続けることだ。それは分かっている。だが、励ますみょんみょん魔法部隊の各々の心のなかにも、テルキィと同じような、あきらめがあるのも分かる。言葉の裏に、「だめかもしれない」という気持ちが乗っているのが分かり、それがいっそうテルキィの体を地面に押し付ける。

 黙って息を整えていたクシャランヌカトリーヌが、テルキィの前に立つ。テルキィを見下ろす決意に満ちた目を見て、この子だけは、「だめかもしれない」という気持ちが無いと知った。

「三頭身じゃないといけない事はないと思いますの。四頭身なら四頭身なりのかわいさがあるんじゃなくって?」

 力強い自信に満ちた言葉は、テルキィの心を持ち上げた。言葉にではなく、その向こうにある心に持ち上げられた。クシャランヌカトリーヌを部隊長に任命したのは正解だった。テルキィはセクシートリカブトの輪を取り、立ち上がった。

「みんな、ありがとう。私、がんばる」

 みょんみょん魔法部隊の面々の笑顔を見て、思わずテルキィもほほえむ。

 クシャランヌカトリーヌが、修行の再開を宣言した。

「では、みなさん。行きますわよ! そーれっ」

『みょんみょん』

 みょんみょん魔法部隊が歓声に沸く。テルキィも感じ取れた。声をそろえて呪文を唱えると、魔力が増大する。しかも、それまで四頭身半だった二人が、四頭身になった。

「これは、大発見ではなくって? みなさん。声をそろえて呪文を唱えましょうぞ!」

 クシャランヌカトリーヌの掛け声に、一同は元気よく答えた。

「そーれっ!」

『みょんみょん』

『みょんみょん』

 森林に少女たちの掛け声がこだまする。いつまでも、いつまでも。

 

 

                   つづく


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落選作品2-2 [落選作品2]

 

 「みょんみょん大魔王の逆襲」  ~ 続き ~

 

 

 親指の腹にナイフの刃を当て、テーブルの上に広げた地図の端に血の印をつける。二三、二四。二四個目が、だいぶ大きくなってしまった。テルキィは、指の血をふき取りながら、二四個目をじっと見つめた。自分だけは大丈夫だと言ったのに、テルキィ以外の女には目もくれないと言ったのに、とうとうバキーバも相手の手にかかってしまった。

 女だからとなめられないように、本気を示すためにつけた血の印は、裏切りを常にテルキィに示す刻印となってしまった。

 森へと吹く生暖かい風で地図がめくれ、血の印を隠す。そうだ、裏切られたと決まったわけではない。消息が分からない以上、他の可能性も考えなければならない。バキーバを信じるべきだ。

 テルキィは、顔を上げた。第九森林区域連続失踪事件調査委員会の面々は、女兵士ひとりを除いて、うなだれている。女兵士以外の人間はすべて文官なので元から覇気はないが、文官とは全体を考えて先読みし、まだ起きていない未来に憂えるものだから、この沈滞した空気は今に限ったことではない。だが、今回の事件は、まったく解決の糸口がつかめないので、いつも以上に言葉数が少ない。かがり火と月光に照らされる彼らの顔には、あきらめの内心が直に表れている。

 指揮官として、テルキィは何かを言わなくてはならない。だが、バキーバを失った痛手は思いのほか大きかった。テルキィは、椅子代わりに使っている切株に座り、星を見上げた。バキーバは、どこかでこの星たちを眺めているのだろうか。

 事の始まりは、第九森林区域にある登録番号「南十八西三五」の泉だった。いつの間にか、そこに木造の家が建っていて、若い女が一人で住んでいた。第九森林区域は、現在、都市化計画が持ち上がっていて、名目上は「自然保護区域」として誰も住んではいけないことになっている。だから、規則にのっとり、女を強制退去させた。

 女の反撃はすぐに始まった。もっとも、その女の仕業だとわかったのは、つい最近のことであるが。

 最初の犠牲者は、森林巡回員だった。巡回から戻る時刻になっても、森林から出てこなかった。別の巡回員が巡回ルートを注意して探したが見当たらなかった。

 失踪と断定し、ただちに南西部第四国民保護署は、第九森林区域失踪事件調査委員会を発足した。

 失踪は続いた。巡回員も調査員も二人一組で行動しているから、病気や怪我などの突発的事象によって失踪を余儀なくされたとは考えにくい。しかも日をあけず連続して失踪事件が起こり、失踪現場もまちまちだ。

 山賊ではないかと推定し、南西部第十八連隊に兵力を出してもらうよう要請したときには、すでに犠牲者は十二人になっていた。事件の名前に「連続」の文字を付け足したあとも、失踪者は出続けた。兵士からも犠牲者が出た。

 敵の出現場所はまちまちで、現場には何も痕跡を残さないから、手の打ちようがなかった。敵に遭遇したら笛を鳴らすように指示したが、笛の音を聞いたものは、いままで誰もいない。

 二十人目の犠牲者が出たときだった。偵察兵が、女についてゆく仲間二人を見つけた。偵察兵は笛を吹き、別の偵察兵と共に女を追いかけたが、すぐに見失った。その女の容姿から「南十八西三五」の泉に住んでいた女だと分かった。

 すぐに別班で、その女の消息を調査したが、女がかつて住んでいた家には暮らしている形跡がなく、その後は手がかり一つ見つからない。

 女についてゆく仲間が、女を追いかけているのではなく、女に協力的に振舞っていたという証言から、失踪の原因は、離反の可能性が高いと判断した。女に魅力的な条件を突きつけられて、寝返ったのだろう。

 風が吹く。テルキィの頭上を越え、バキーバがいるはずの森の方へ。

 バキーバは、必ず帰ると言ったが、あれは本心だったのだろうか。目の前で言われたときには、唯一無二の真実だと思っていたが、こうして離れてみて思い返すと、疑念が沸いてきてしょうがなかった。もう一度、言って欲しい。もう一度、目の前で「俺にはお前だけだ」と言って欲しい。

 誰かが、思い切りテーブルを叩く。音のしたほうに顔を向けると、この委員会の中で唯一目の光を失っていない女兵士、クシャランヌカトリーヌ・ヘイベルスタッティアだった。ウェーブのかかった金髪を振り乱し、碧眼の少女は立ち上がって熱弁する。

「こうなったら、掃討作戦でいくしかありませんわ! 森を焼き払うのが最善ではなくって? この様なことを続けていても、失踪者を増やすばかりじゃありませんこと?」

 テルキィは座ったまま、クシャランヌカトリーヌに応えた。

「確かにそれはいい考えだけど、でもね、クシャランヌカトリーヌ、それには費用もかかるし人材も必要なの。調査委員は兵士を入れて、いま四七人。森林は広いし、湿地が多いから、この人数で焼き払うには膨大な時間がかかる。とてもじゃないけど無理なの」

 この地は、一年を通じて北東からの風が吹き、それが南西にそびえる山脈に当たる場所で、風にのって流れてきた雲は、山脈に当たって一年中雨を落とす。ゆえに、水源の確保が容易で、だからこそ都市化計画が持ち上がった。だが、雨のせいで湿地が多いこの地は、焼き払うのは困難で、都市化計画の一番のネックにもなっている。

「お金と時間より人間の命のほうが大事なんですのよ!」

「そうなんだけどね。人材と費用を大量につぎこまないと、焼き払う作戦は現実的とはいえないのよ。そして、失踪者は死んだと決まったわけじゃないから、これ以上、人やお金を引っ張ってくるのは難しいんだ」

「まったく、政府や軍は何を考えているのかしらっ!」

 憤慨しきって、自分の切株に腰掛ける。綺麗に磨かれた金属鎧が、かがり火の明かりを鋭く反射する。じっとしているところを見ると、さすがに自分の上官兵に「兵力をもっとだせ」と直訴する気はないらしい。

 クシャランヌカトリーヌが黙ると、誰もあとを継いで口を開く者がおらず、行き先の見当たらない沈黙に、呼吸までもが苦しく感じる。

 かがり火の向こうでは、調査員や偵察兵が思い思いの格好で夕食をとっている。こちらの沈黙が伝播して、みな黙り込み、この捜査の行き詰まりを沈黙で主張している。

 彼らの言い分は、言わなくても分かる。捜査範囲のわりに人が足りない。だが、国民保護署も、軍隊も「これ以上、人は出せない」の一点張りだった。十日後に控えている国王の視察が、そんなに大事なのか。だが、向こうの立場を考えれば、強く押せなかった。向こうは、国王に対して忠誠心があろうとなかろうと、下級職数十人よりも国王の命を大切にする役目にある。どう説得したところで、兵は出してもらえない。

 答を求めるように、南に広がる森を眺めていると、騎馬が一騎、南東側からの道から、かがり火の光の中に入ってくるのが見えた。騎手は、灰色の頭巾に灰色の外套。ミミル大老の側近だ。なにか分かったのか。事件の情報を、王国の知恵袋「大老」に報告したのは正解だった。テルキィは、側近に走りよった。

「こんばんは。第九森林区域連続失踪事件調査委員会、委員長のテルキィです。なにか判明しましたか?」

 頭巾の奥でゆっくりうなずき、しわがれた低い声で、ゆっくりと話す。

「かの者の正体が判明しました。ミミル大老ご自身が、ご説明なさいます」

「そうですか。連絡ありがとうございます。大老の桜塔院に出向けばよろしいですか?」

「否。大老は、ここへお越しです」

「え? 私たちの方から出向きますのに」

「ことは重大とのご判断です。とり急ぎの伝達が必要であります」

 側近が、背後を指し示す。月明かりの中に、一台の荘厳な馬車がそびえている。きらびやかな装飾が施された箱の背後から、みこしに乗ったミミル大老が現れた。六人の側近に担がれた大老は、大きな赤い椅子に納まっている。大老が近づくと、テルキィを含め、周囲の者が一斉に居住まいをただし、肩ひざをついて、大老を待つ。

 大老が、かがり火の光の中に入ってくる。魔法で獲得した長寿は、肉体の老いまでは止めてくれないようで、服の内側で何重にも重なっているだろう肉が、椅子の側板から溢れてとろけ出そうだ。性別が分からなくなるくらい、顔にもよれた肉がついている。ミミル大老は肉と皮に埋もれそうな目を、しばたたかせ、くぐもった声で語りだす。

「かの者、<みょんみょん大魔王>なり。南方の紀行文士イレレン・トリビュータなる者が『チラリン王国騒動記』に書き遺す。その力、強大なり。その魔力<ネタ切れ大魔神>に匹敵す。かの者、みょんみょん魔法にて、人心を惑わし、己の配下と成す。あらがう術なし。放置すれば、一国を奪われるに至る。<みょんみょん大魔王>に軍隊を差し向けるなかれ。その兵力、一人残らず奪われる。<みょんみょん大魔王>に交渉人を差し向けるなかれ。交渉人を一人残らず奪われる。<みょんみょん大魔王>侮りがたし」

 ミミル大老は、いったん言葉を止める。平民は、大老への質問を許されていない。テルキィは、他の者と同様、大老の次の言葉を待った。まさか相手が大魔王だとは思わなかった。バキーバは、女の魅力にやられたのではない。魔法にやられたのだ。そう思うと、心が少し救われる。みょんみょん魔法とは、どういうものだろうか。鍛えた兵士が笛をふく間もなくやられるのだから、きっと恐ろしい魔法に違いない。

「みょんみょん魔法を退ける術はただ一つ。みょんみょんには、みょんみょんを。かの者より強力なる、みょんみょん魔法で対抗せよ。さすれば<みょんみょん大魔王>は、この地を去ろう。清純なる乙女を集めよ。セクシートリカブトの葉で王冠を作れ。男子を排して修行せよ。さすれば、道は見えてこよう」

 ミミル大老は、片手をゆっくり挙げる。一同は、深く頭を垂れた。大老の合図で、みこしは引き返し、ゆっくり馬車に納まってゆく。騎馬で先触れに現れた側近を残して、大老の馬車がゆるゆると月光の向こうへ去ってゆく。

「テルキィ殿、いかがいたしましょう。みょんみょん修行をなさいますか?」

 側近の言葉に即答した。

「もちろんです。詳細を教えていただけますか?」

「かしこまりました」

 道が開かれた。少女たちの、みょんみょん修行が始まった。

 

 

                   つづく


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